ウサギの病気 | 広島市東区の動物病院『はちペットクリニック∞』
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ウサギに良く見られる歯の病気

ウサギの切歯は上顎に4本、下顎に2本あり、互いにかみ合っています。臼歯は上下あわせて22本あります。
歯は生涯伸び続ける常生歯ですので、かむ動作により磨耗され、常に正しい長さに保たれます。そのため牧草をしっかり食べて、歯を“うす”のように使うことが大事です。

あまりかむ必要のないものばかり食べていたり、硬いペレットばかりだと、顎の上下運動ばかりが優位となり、歯がうまく磨耗されず歯が削れなくなってしまいます。
すると、咬み合わせが悪くなるだけではなく、歯が頬や舌に刺さってしまい、口腔を傷つけ痛くて食べられなくなります。

こうして不正咬合が起きると、よだれ、目やに、涙、鼻汁などの症状や強い痛みが見られたり、皮下に膿瘍が発生することもあります。

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不正咬合により伸びすぎた切歯

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臼歯が刺さり舌に出来た傷

検査と治療

病状によりさまざまですが、より詳しい評価のためにレントゲン検査や食べていないことが原因で一般状態が悪い場合には血液検査を行ないます。
長く伸びすぎた歯は、麻酔をかけて削ります。
不正咬合があるウサギでは、うまく歯が磨耗されなくなり再び伸びてしまうので、定期的に病院で歯を削っていく必要がでてきます。切歯の不整咬合が臼歯の異常へ、臼歯の不整咬合が切歯の咬合の異常につながっていくことがわかっています。
不正咬合があるウサギでは約1ヶ月間隔、不正咬合がないウサギでも6ヶ月毎で歯科検診を行なうことをおすすめします。

予防

不正咬合には、食生活以外にも遺伝的な因子や切歯では特にケージをかじったり、落下でぶつけるなどの外傷も考えられます。落下など事故に起因する不正咬合では、小さな頃から抱かれても暴れないよう慣れさせることも予防につながります。
まず、ウサギは草食動物です。チモシーなどの乾草をしっかりたべさせる食生活をつけることが本症の予防になり、そして、次の歯科処置が必要な時期を遅くすることが期待できます。

子宮の病気

4歳以上で発病率が高いメスのウサギの病気

子宮の病気、不正出血

ウサギは子宮疾患の発生頻度がとても高い動物です。特に、4歳以上になってくると発病率も高くなります。(4歳以上のウサギでは子宮癌の発病率が60%との報告もあります。)
もともと、肉食動物に捕食される弱い立場にあるウサギには、子孫を絶やさないよう高い繁殖能力があります。(野生では年に5~6回妊娠できるといわれています。)
ウサギでは、1~2日の休止期と4~17日の発情期を繰り返します。

妊娠する機会がほとんどない家庭で飼育されているウサギでは、常に発情している状態が続くことになります。

この不自然なホルモンバランスが続くことが悪影響を及ぼし子宮の病気が多発すると考えられています。
子宮の病気で多いのは、腺癌、筋腫、内膜過形成などです。

よく見られる症状は、子宮からの不正出血のために赤い尿をすることですが、末期的な症状にならない限り元気・食欲に変化が現れにくいのも特徴です。

出血が続けば、目や口の粘膜が白い、呼吸が荒い、動きたがらないといった症状も現れます。癌ではお腹をさわるとしこりに触れることがあります。

検査と治療
診断には、超音波検査とレントゲン検査を行ないます。身体の状態をよく把握するために、血液検査も行ないます。
治療は、外科手術により子宮と卵巣を摘出することになります。
しかし、しばしば発見が遅れると癌が肺へ転移していたり、また重度の貧血により麻酔をかけることが困難となるケースもあります。

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陰部からの不正出血

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大きな腫瘤(腺癌)が見られる

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腺癌の病理組織写真:腺腔構造が充実性に配列している。

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子宮内膜の過形成

予防

若いうちに避妊手術を済ませておけば、これらの病気は予防が可能です。
避妊手術をしていない場合には、半年に1度は検診をうけることをお勧めします。
ウサギでは全ての症例で犬、猫のように気管挿管して手術をすることができるわけではなく安全性の面でも若干のリスクは伴います。
また、術後には環境ストレスや疼痛によって食欲が落ちることがしばしば見られ、犬、猫以上に管理が大変な一面があるのも事実です。
しかし、それでも病気になってから手術を受けるよりは避妊手術のメリットは大きいものと考えています。

消化器運動の低下

消化管のうっ滞(胃腸の運動性の低下)

さまざまな原因から生じる病気

消化器疾患の中で最も多いのが、消化管のうっ滞です。消化管のうっ滞は、消化管の運動が低下したり、停止したりすることで生じます。

消化管のうっ滞は消化管の問題だけではなく、痛みやストレス、歯科疾患、泌尿器疾患など様々な要因による食欲低下や、不適切な食餌管理など2次的な原因により生じます。
ウサギでも稀に異物を飲み込んで消化管の閉塞を起こしたりすることもあります。

ウサギでよく言われてきた毛球症ですが、以前は、毛づくろいで飲み込んだ毛が毛球状にかたまった結果消化管うっ滞を起こすと考えられてきました。
現在では、胃の運動が低下することにより消化管のうっ滞が起こり、その結果、胃内に毛球が形成されると考えられています。

(1) 現在居住している市区町村に飼い犬の登録をすること
(2) 飼い犬に年1回の狂犬病予防注射を受けさせること
(3) 犬の鑑札と注射済票を飼い犬に装着すること

この3つが法律により義務付けられています。

近年の我が国の狂犬病発生状況

消化管のうっ滞が起こると、食欲低下食べ物の好みの変化便の小型化排便量の減少毛でつながった便がみられるなど食欲や排便に関係する異常がみられます。

症状が進むと、元気がない、じっとして動かない、お腹にガスが貯まる、また、腹痛のためお腹を伸ばす姿勢や歯軋りがみられることもあります。

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術後食欲が落ち治療を受けるウサギ

検査と治療

必要な検査や治療は病状により異なりますが、根本的な原因を調べると同時に、消化管の機能を正常に回復させるために、補液、胃腸運動促進剤、鎮痛剤などの使用を行ないます。
消化管が完全に閉塞している場合を除き、食欲が落ちているウサギには食事の介助(強制給餌)が必要となります。
また、元気がある場合には適度な運動やおなかを軽くマッサージしてあげることや保温も胃腸の動きを回復するのには有効です。

予防

胃腸運動を適正に保つには、繊維を多く含む食物(チモシー乾草)が不可欠です。
乾草をたくさん食べる習慣をつけてください。

通常、ウサギはコロコロとした大きな糞を毎日たくさん排泄します。毎日、糞の状態や数、大きさを確認しておくことが早く胃腸運動の機能低下をみつける上でも大切です。
ウサギはストレスに非常に弱い動物で、強いストレスにより食欲がなくなったり、下痢をしてしまうことがあります。

食事内容の急変、環境の変化、温度の急変を避け、適度な運動や被毛の手入れ、異物の摂取にも気をつけて下さい。

食欲の低下に気づいた場合は、可能な限り早く治療を始めることが大切です。

全身麻酔は危険?!

気管挿管が困難であることが1つの要因

ウサギは体の割合にたいして胸部が小さい、つまり肺の領域が極めて小さいという特徴があります。
呼吸器系疾患(呼吸困難や努力呼吸)がある場合は、ストレスのかかるレントゲン検査等が困難となるケースもあります。検査で死んでしまうことになっては元も子もない!と思うと、呼吸の悪いウサギさんには迂闊に手も出せません。もちろん健康であればさほど問題とならないことも、病気時のウサギへの検査、治療は犬猫に比較すると非常なストレスとなることが多いです。
そんなこともあって、全身麻酔に関しても、ウサギさんは弱くて犬猫に比べると簡単に死んでしまうと思っている方が多いように思います。
健康な子が早々簡単に死ぬことはありませんが、やはり病気のために手術を受ける機会が増えていると考えると、麻酔のリスクは犬猫と同等とは言えないのは事実です。
また、ほぼ心肺停止状態で運びこまれたウサギに対して気管挿管を行って心臓マッサージを施したとして生還を果たしたウサギさんにこれまで遭遇したことがありません。ストレスに対する弱さは草食獣の宿命なのかもしれません。とにかく、麻酔に関しては出来るだけしっかりモニターを行い事故を未然に防ぐに越したことが無いと考えています。

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気管挿管されたウサギ

安全に麻酔管理を行っていく上で、犬猫ではルーチンに行っている気管挿管ですがウサギでは気管入口を肉眼で目視することが出来ず、盲目的に気管挿管を行っていました(内視鏡等で覗くという方法もありますが)。1.5キロ未満の小型のウサギとなると、盲目的に気管挿管を行うのは困難であることが多く、また、盲目的に何度もトライすることで気道入口を傷つける危険性も高まってしまいます。気管挿管のメリットというと、呼吸管理が麻酔中もしっかり行えるというところですが、気管になんとか挿管しようと頑張りすぎて気道を痛めてしまうといった問題を生じるわけにもいかず、挿管がダメな場合はマスクによる麻酔管理を行っていました。
昨年海外からウサギ用に開発された気道チューブを購入したおかげで、1キロ未満であっても楽に呼吸管理を行えるようになりました。麻酔中も呼気二酸化炭素濃度も測定でき、呼吸補助も行えより安全な麻酔管理がどのウサギさんでも行えることになりました。これで麻酔リスクがゼロになったわけではありませんが、精度は以前よりよくなってきていることは確かです。