猫の病気 | 広島市東区の動物病院『はちペットクリニック∞』
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猫エイズ(FIV)感染症ってどんな病気?

猫エイズには、喧嘩や交尾など、粘膜の直接的な接触や汚染血液との接触で感染します。ウイルス自体は弱く、空気感染はしませんが、感染力が強く1回の咬傷でも伝播する可能性はあります。人に感染する心配はありません。
アメリカでは野良猫の猫エイズ感染率は4%、日本では自由に歩き回る猫が多く健康な猫で29%、病気猫で44%に達するとの報告もあります。
一度ウイルスが体に入りこみ、感染が成立すると、早ければ3~4週間ほどでエイズウイルスに対する抗体が体で作られるようになります。

 

感染から発病までのプロセスは?

 

 

急性期
感染後4-5週間よりこの期に入り、4ヵ月持続。
発熱など軽い感染症を引き起こしたり、リンパ節が腫れたりしますが、次第に無症状になってしまいます。
無症状のキャリアー期
数ヶ月から7-10年つまり長期間は健康的に見え、日常生活を送ることができます。
持続性の全身リンパ節腫脹期
エイズ発症期 感染症や慢性疾患で1/3が来院します。この時期一番多い症状は口内炎です。そのほかにも怪我がなかなか治らなかったり、目やにや鼻水をいつも出しているようになることもあります。抵抗力の低下が原因です。発症してからは、生存期間は1年未満です。
末期
日和見感染や貧血、慢性の下痢を引き起こし次第にやせ細り最後には死に至ります。

病気の診断方法は?

検査は血液中にエイズウイルスに対する抗体を持っているかを調べます。抗体が作られるには、感染してから早くても3週間は必要なので、噛まれるなどの怪我をして1ヶ月は経過してから検査を行なうことで診断を行ないます。

猫エイズ感染症(FIV)検査に関するAAFP*のガイドライン
(*American Association of Feline Practitioners )
①たとえ子猫でも家に引き取られた時点での検査を実施
②同腹子(兄弟)はすべて個別に検査を実施。
③子猫が陽性なら6ヶ月後に再検査。(母親猫の移行抗体の場合は6ヵ月後に消失するため)
④感染猫と同居、出歩く猫は定期的に検査を実施
⑤疾病状態の猫(以前陰性であっても)検査を実施

感染していると分かったら、現在のところ、極力ストレスを与えないようにして栄養状態を良好に保ち、抵抗力の維持につとめて発症を出来るだけ遅らせることしか有りません。
外に出すと、他の猫の感染源となってしまう恐れがありますので、必ず自宅で飼育するようにしてください。

エイズ感染症を予防するには?

感染している猫が感染源となります。繰り返しになりますが、直接感染している猫との喧嘩、交尾によりうつります。
そのため、外出せず室内のみで単頭飼育されていれば感染の心配はありません。感染している猫と同居している猫、外へ出てしまう猫では感染のリスクが出てくるため、ワクチン接種についても検討してみる必要があると思います。
エイズ感染症の原因となるウイルスはレトロウイルスといい、現在A~E(F)の5種のサブタイプが知られています。レトロウイルスは、変異率が高く遺伝的な多様性が著しいため人においてもエイズを予防できるワクチンはありません。
猫のエイズ感染症予防ワクチンの予防率は100%ではありませんが、感染リスクを上回るメリットは認められていますので接種する価値はあると考えています。

猫白血病(FeLV)ってどんな病気?

どうやって感染するの?

日本の猫は統計によると、健康に見えても約3~5%、病気の猫では、約15~20%が猫白血病ウイルスを保有していると推定されています。
この病気は、猫白血病に罹患している猫の唾液、尿、涙液、母乳、血液から感染します。
胎盤感染やグルーミングをしあったり、お皿の共有、咬傷などで感染が成立しますが、感染にはたくさんのウイルスが必要であり簡単に感染する病気ではありません。
特に、4ヶ月までの子猫が感染しやすいのですが、年齢とともに病気への抵抗性が強くなっていき、成猫では感染してもウイルスは不活化され自然に治ってしまうこともあることが最近では分かっています。
感染している猫と2~3ヶ月以上同居している猫への感染の有無を調べたところ、10~15%の伝染率であったとの報告がされています。

症状は?
通常、白血病に感染した猫は、2~3年以内に多くの場合、病気が発症します。ウイルスのタイプ(サブタイプA,B,Cがある)により症状はことなりますが、リンパ腫・白血病といった悪性腫瘍や抵抗力の低下によるさまざまな感染症、非再生性貧血などが見られ予後は不良です。

病気の診断方法は?
ウイルスの暴露があってから6~8週間後に血液中にウイルスが出現してきます。血液中のウイルス(抗原)の有無を確認すること(ELISA法)で診断を行ないます。
成猫では、血液中に抗原が出現したあとにも治癒する可能性もあるために、1度の結果では陽性とは診断できません。その逆に陰性であっても血液中にウイルスがまだ出現する時期ではないケースでも再検査は必要です。
確定診断は、IFA法など異なる手法を用いた血液検査あるいは数ヶ月後の再検査を行なったうえで行ないます。

猫白血病(FeLV)検査に関するAAFP*のガイドライン
・すべての猫と新しく導入する猫を検査
・疾病状態の猫は以前陰性でも再検査
・猫白血病ワクチン接種前には検査を実施

猫白血病を予防するには?

感染している猫が感染源となります。感染した猫との接触が無ければ伝染する心配はありません。
白血病の猫と暮らすあるいは4ヶ月齢未満の子猫は感受性が高いため、予防注射の接種での予防をお勧めしています。
もちろん、ワクチン接種前にはまだ白血病にかかっていないことを確かめてから接種することになります。

現在の猫白血病ウイルスの予防接種の問題点として、ワクチン誘発性の腫瘍(肉腫)の問題があります。1991年に初めて、ワクチン接種部位に腫瘍ができていることが発見されました。その後の欧米の調査では白血病ワクチンまたは狂犬病ワクチンを接種している猫の、kassは10,000頭に1~3頭、Hendricはより高く1,000頭~10,000頭に1頭の割合で起こると報告しています。複数のワクチンを同時に、または接種する回数が増加するほど腫瘍の発生率の上昇を認めます。つまり、ワクチン誘発性肉腫は白血病ワクチンだけに限った話ではありません。

肉腫発生を避けるために出来ることとは

・ワクチンの数は必要最小限にする。
・ワクチン接種部位はAAFP(アメリカ猫臨床家協会)の推奨に従い左後肢に決めておく。
・ワクチン接種直後にしこりが発生し、4~6週間で消失しない場合は検査をする。

肉腫の危険性を書いてしまうと、白血病ワクチンの接種があたかも怖いものに感じられるかもしれません。しかし、感染猫との同居を例に考えれば、猫白血病ウイルスに罹るリスクより依然として低いことがいえますし、日本では猫は狂犬病ワクチン接種が義務化されていないため同数では評価されない部分もあると考えられます。
猫白血病は感染が成立してしまってからでは治せない予後不良の病気です。
病気の特性を理解した上で、ワクチン接種については考えていただきたいと思います。

2008 American Association of Feline Practitioners’feline retrovirus management guidelines  Journal of Feline Medicine and Surgery (2008) 10, 300-316 参照

年に1度、混合ワクチンを接種しましょう。

現在、ワクチンがあるのは以下の病気です。

猫エイズ感染症(FIV)検査に関するAAFP*のガイドライン
(*American Association of Feline Practitioners )
①たとえ子猫でも家に引き取られた時点での検査を実施
②同腹子(兄弟)はすべて個別に検査を実施。
③子猫が陽性なら6ヶ月後に再検査。(母親猫の移行抗体の場合は6ヵ月後に消失するため)
④感染猫と同居、出歩く猫は定期的に検査を実施
⑤疾病状態の猫(以前陰性であっても)検査を実施

猫エイズ感染症、猫白血病ウイルスの感染の心配の無い、室内飼育猫には3種混合ワクチン。猫エイズ感染症、猫白血病ウイルスにすでにかかってしまっている猫ではワクチンでの予防は出来ないため、他の感染症から予防するためにも3種混合ワクチンの接種をお勧めします。
また、エイズ感染症や白血病ウイルスに感染している猫と同居、あるいは外へ自由に出て暮らしている猫では、感染のリスクを考え3種混合ワクチンと猫エイズ・白血病ワクチンの接種をお勧めします。(*初めてワクチン接種される際には、猫エイズ感染症・猫白血病ウイルスにかかっていないかの検査を行ないます。)とはいえ、外に出さず室内で飼育し、怖い病気からの感染を防御することの方がおすすめですが。。。
ワクチン誘発性肉腫の点からみても、猫のワクチンに対しては必要最小限に接種にすることが望ましいと考えています。

混合ワクチンQ&A

不妊手術について

不妊手術はかわいそう?

犬に比べると猫の不妊手術をしないで自宅で飼っているという人は少ないように思います。オスは家の中でスプレー行動といって臭いオシッコをかけてまわったり、メスは定期的にくる発情期に今までとは違う大きな鳴き声を出しご近所迷惑になんてことに。。。
そして外に出入りする猫ちゃんなら増えて増えて困ってしまうということもよくあります。
人と暮らしていく上でも不妊手術を済ませてあるほうがお互い生活しやすい面が多いことからも猫ではわりと手術をして飼う事が一般的になりつつあると感じます。

とはいえ、大事なペットに手術をうけさせるのはかわいそうと感じるのは自然のことだと思います。内科的に、例えば注射一本で避妊することができるのなら、こんないいことはありません。 しかし、多くの場合ホルモンを使用する治療には、副作用が発生する為、長期的には奨励されていないのが現状です。
手術には、行動的な理由、社会的な理由、医学的な理由があります。
手術により、オスでは穏やかになりケンカやマーキングが少なくなる、メスでは発情期の独特な鳴き声がなくなる他、病気の面では生殖器の病気、精巣の腫瘍や子宮の病気や乳腺の病気の予防につながります。
毎年、たくさん処分される猫たち。猫を今以上に増やすのではなく、処分されていく子たちに目をむけ手を差し伸べてもらえたらいいなと切に思います。

手術する時期は?

アメリカでは生後3.5ヶ月から遅くても6ヶ月までというのが一般的で、 特に最近では早期不妊手術といって生後6-14週齢でも行われるようになりました。
早期不妊手術自体は行いやすく、子猫の回復も早いとされています。実際に大阪のシェルターで早期不妊手術を実施した際、子猫の回復の早さを実感しました。早期不妊手術のメリットは手術済みのかわいい子猫を引き取ることができる上、引き取られた先で今後望まれない子猫を増やす心配が無いことです。
そのため、当院では早期不妊手術も取り入れており、発情期がくるまでの遅くても8ヶ月までに手術を行なうことを勧めています。

手術方法は?

・手術は予約が必要です。また、前日の夜10時以降は食事を与えず、手術当日の朝からは水もぬいて午前中の診察時間中に来院ください。

手術後の注意は?

一般的に肥満になりやすくなります。術後は必要カロリーが減少します。オスでは28%、メスでは33%の必要カロリーが低下するにもかかわらず、食欲は20%ほど上昇することが多いです。そのため、以前と同じ食事内容を与えていたり、欲しいだけ与えているとカロリーオーバーになることが最大の肥満の原因です。

食事と運動の量を正しくコントロールすることで、肥満は避けられます。肥満になると、糖尿病や関節炎、尿石症のリスクも高くなるというデータがあります!
不妊手術後の食事管理のために作られたフードもあります。健康のためにも肥満には気をつけましょう!

口内炎と全臼歯抜歯

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猫にも見られる歯周病/口内炎

猫では歯肉の炎症だけでなく舌や矢印のように口の奥、のどの入口(口峡部分)まで、赤く腫れて炎症を起こすような病態になることがあります。口の周りがよだれで汚れてきて臭う、触られると痛がり食べることが出来なくなり来院するケースが多いです。歯石がたくさんついていることがイコール歯周病ではありません。

原因は?

こういった猫の慢性歯肉口内炎の原因は確定していませんが、口腔内細菌や細菌の出す毒に過剰に反応して起こるのではないかと推察されています。また、最近ではウイルスの関与も推察されています。

治療方法は?

口腔内の清掃や、抗生物質、ステロイド、抗炎症剤など様々な内科療法が試みられますが、残念ながら内科治療単独では完治しないことが多いです。
現在のところ、乱暴な治療ではありますが全臼歯抜歯(奥歯を全て抜く)、あるいは、全顎抜歯(全ての歯を抜く)が最も効果的で完治を望める可能性のある治療法とされています。

なにもすき好んで大事な歯を根こそぎ抜くわけではないのですが、痛みの元凶となる歯がなくなるほうがよっぽど生活の質の向上が見られて、よく食事がとれるようになるからなのです。正直な話、抜歯はする方も大変です。小さな猫の歯根を折って残さないように慎重に慎重に、時間も労力も気もすり減らせてやっています。
とはいえ、歯周病がみな抜歯適応というわけではありません。腎臓の病気や猫エイズや白血病ウイルスの感染など何か他の病気による基礎疾患があれば、口の治療だけでよくなるものでもありません。

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左)After 右)Before 舌下に肉芽組織が形成されている

舌の裏側まで潰瘍と肉芽腫(炎症で赤く盛り上がった部分)が出来ていました(写真右)が、全臼歯抜歯後(写真左)かなりよくなりました。治療後もステロイド剤や抗炎症剤が必要な症例もありますが、嬉しいことにこの猫ちゃんは無治療で暮らせています。

地域猫活動って?

TNRs

不妊手術だけを行ったら「地域猫」というのは正式には間違いです。野良猫の糞尿の匂いが酷い!庭やゴミを荒される…等の問題までは解決されません。
地域猫活動とまで呼ばれるようになるには、地域の住民の間で地域猫活動の事を認識しあい、地域の結びつきの中で猫を見守っていく事こそが一番大事なところです。

TNRの考え方

1.野良猫に不妊去勢手術を行い、元のテリトリーで一代限りの命をまっとうさせる。
2.餌やりのルールを決め、糞尿の掃除を行い、衛生面の配慮をする。
3.子猫が産まれなくなり発情期の鳴き声や喧嘩がなくなる。
4.数が増えない事により猫の管理がしやすくなる。
5.数が減ることで被害や近隣トラブルも軽減される。
6.駆除や迫害をせずに動物と共存できる事を地域の子供達に学ばせる事ができる。
7.地域の一人一人が結びつく事で防犯の効果も期待できる。

野良猫はイノシシやクマと同じ類の野生動物でしょうか?
もともとがヒトの側で生きてきた動物ではないでしょうか?

増えすぎて不幸な猫を増やさないように!とは猫にお任せしてできることではなく、ヒトの介入が必要なのではないかと考えます。
関東では、市がTNR活動を支援しているところがあります。行政と地域の人が協力体制と管理が行き届けば、不幸な猫の数も減ってくれるし、ゆくゆくは世話をしてあげられないということで無力の自分を責めたり悲しい思いをする人達も減ってくれるのではないかと思います。広島でも、町や市ぐるみで猫の数をコントロールしてヒトと猫ともに過ごしやすい地域になって欲しいなあと思います。

広島市動物管理センターの獣医師たちが、猫の不妊治療を行う技術を身に着け地域猫活動をスタートする基盤づくりを2014年から始めました。地域の皆様の理解があってこその活動であり、糞便処理についてのボランティアさんの協力や町民の承諾などクリアしないといけない問題があるため、どの町でも行えるわけではありません。広島市の年間犬猫殺処分数も全国ワーストであったことから奮起して殺処分数も年々低下してきています。どんどんこの活動が受け入れられる町が増えてくれることを期待しています。