有袋類の仲間フクロモモンガ
はじめに
フクロモモンガは、オーストラリアの北部やニューギニア島に分布し、温帯から熱帯の森林に群れを作って社会生活を送っています。仲間とは匂い付けや鳴き声でコミュニケーションをとっており、かなり大きな鳴き声をだします。(余談ですが、リロ&スティッチのスティッチがフクロモモンガをイメージして出来たキャラクターだそうです。)
有袋類の仲間で、メスはお腹に育児を行なう袋を持っています。オスは、額部分の皮脂腺の分泌と脱毛が特徴です。
野生での食性は季節により変わり、ユーカリやアカシアの樹液、花の蜜、クモなどの昆虫類を食べています。
残念ながら、フクロモモンガに与える栄養完全食は市販では無く、栄養管理や飼育の面ではまだ発展途上の状態です。
そんなフクロモモンガの食事について少し触れておこうと思います。
海外の動物園や専門書が勧める食事内容の例
レシピその1
- ☆3 gのリンゴ
- ☆3 gの バナナ/トウモロコシ
- ☆1.5 gのドックフード(腎臓病/肝臓病用フードなど)
- ☆ティースプーン1杯分の 虫
- ☆3 gの ブルーベリー/キウィフルーツ
- ☆ティースプーン2杯のLeadbeater's mixture **
- ☆4 gの皮付きのオレンジ
- ☆2 gの梨
- ☆3 gのサツマイモ
** Leadbeater's mixture
・150 mlのお湯
・150 mlのハチミツ
・殻付きのゆで卵1個
・25 gの赤ちゃん用シリアル
・ティースプーン1杯のビタミン剤のサプリメント
これらをミキサーにかけペースト状にし、冷凍保存しておく
フクロモモンガは好きなものを選び食いするので、ドックフード10粒とメイプルシロップ5ml、マンゴーやパパイヤなどの冷凍フルーツミックスや冷凍ミックスベジタブルをミキサーにかけたものを与えることで偏食を防ぐ方法もお勧めです。
おいしいレシピを作ってくださいね。
詳しくはスタッフまで。
よくある病気
代謝性疾患
不適切な食事により、栄養失調、低カルシウム血症を起こす。
後ろ足の麻痺、振るえ、貧血、骨粗しょう症や骨折が見られることがあります。
肥満
運動不足や脂肪分の摂取しすぎにより生じます。心臓や肝臓の病気につながることもあります。
おうちのフクロモモンガが最近滑空していないなあと思い当たる場合、それは肥満かもしれません。
白内障
若年性の白内障がフクロモモンガでは見られることがあります。遺伝的なものや育児嚢で育つ時期に外傷や栄養の問題から生じるものがあります。
消化器疾患
下痢や便秘、直腸脱などがあります。消化管の寄生虫や原虫も見られますので、糞便検査を行い治療します。
炭水化物の多い食事をとっている場合は、歯周病もよく見られます。
ストレスに関連した疾患
この病気については、自咬症に記載します。
フクロモモンガはよじ登ったりしがみついたりとじっとできない動物のため、レントゲン検査、超音波検査や血液検査などの精密検査には麻酔が必要となります。
自咬症
自咬症はストレスに関連した疾患の1つ
自咬症とは、自分自身の体の一部である尾、足、生殖器などを写真のように噛み傷つけてしまう病気のことをいいます。
噛まれたペニスと総排泄腔
噛まれた尾の付け根
オスのフクロモモンガがペニスを噛みちぎってしまい、排尿できなくなり死亡してしまう重篤なケースも少なくありません。
自咬症は痛みや違和感、ストレスに関連して生じると報告されています。
若いオスのほうが発生が多いですが、メスでも見られます。
もともとが群れを作って社会生活を送る動物のため、単頭飼育で退屈だったり運動不足のフクロモモンガや同居の仲間がいなくなって寂しくなるなどの環境のストレス、オスでは特に性成熟後の攻撃性や衝動の変化により生じるストレスに関連した疾患といわれています。
ストレス性以外には、皮膚の痛みや総排泄腔付近の違和感の原因になる皮膚の感染症や消化管内寄生虫(特にジアルジア)の有無を鑑別しておく必要があります。
治療や予防
治療は、原因によりますが疼痛緩和の実施、消化管寄生虫の駆除や性衝動によるストレスの場合には去勢手術、精神的なものによる場合は抗不安薬の使用も必要となります。
そしてなによりの要となる予防ならびに治療方法がエリザベスカラーの着用です。
もちろん、普段からの充分な運動やスキンシップも予防には大事です。
カラーを装着されたモモンガ
内科療法にてうまくコントロールされない場合には、長期のエリザベスカラーの着用(時に一生涯)となります。
しかし、まだデータや治療経験が少なく今後のさらなる症例報告が待たれます。
当院でも海外の症例報告を参考に、飼い主さまと手探りで治療を行なっているところです。
万が一、あなたのフクロモモンガが自咬をはじめた場合はすぐに動物病院に連れて行ってください。その日のうちに重篤な傷を形成してしまう恐れがあります。
オスの去勢手術によくある質問
詳しくはスタッフまで