フィラリア予防の季節です。
予防が大切だからといって、「昨年飲ませ忘れたお薬がいくつかあるわ!」と、感染の有無を確認せずに薬を投与していませんか?
フィラリアが感染し、血液中に子虫が既に住み着いていることを知らずにお薬を与えると、ショックなどの副作用を引き起こすこともあり危険です!
最悪の場合は、命に関わることもあります。
フィラリア症の予防薬は感染させないためのものではなく、感染直後のフィラリアの幼虫を退治するためのものです。
お薬の飲み忘れ、あるいは犬が薬を吐き出すなどの理由で子虫を退治できていなければ、冬の間にゆっくりと成長して既に親虫となって心臓に住み着き感染が成立しているかもしれません。
お薬をうまく飲みきちんと予防が出来ているかどうかを毎年欠かさず投与前に検査をすることが必要です。
フィラリア感染の有無は血液検査で行ないます。
1回の採血でフィラリア検査と同時に健康診断をかね血液検査を行うことも高齢になってきた犬にはお勧めしています。
検査でフィラリアの親虫や子虫が検出された場合は、現在いるフィラリアの駆除を行ないます。
しかし、血管内に住む成虫を殺す治療を行なえば、死んだ成虫が細い血管に詰まるために犬の体にも大きな負担がかかります。
急な症状の場合には、手術でとり除くという方法もありますが、なるべく選択したくない治療です。
これら治療のあとも心不全の治療を行なっていかなければならないケースもあります。
予防にまさる治療なしですね。
蚊が出始めた1ヵ月後から蚊がいなくなって1ヶ月後までが予防期間です。
気温により異なりますが、広島市の予防期間は5月中旬から11月中旬までとなります。
まだ予防を始めていないワンちゃんはお早めに!!
フィラリアQ&A
狂犬病ワクチン
4月~6月は狂犬病予防注射月間です。
犬の飼い主さんには、
(1) 現在居住している市区町村に飼い犬の登録をすること
(2) 飼い犬に年1回の狂犬病予防注射を受けさせること
(3) 犬の鑑札と注射済票を飼い犬に装着すること
この3つが法律により義務付けられています。
近年の我が国の狂犬病発生状況
1953年 | 1954年 | 1955年 | 1956年 | 1970年 | 2006年 | |
---|---|---|---|---|---|---|
死亡者数 | 3人 | 1人 | 0人 | 1人 | 1人 | 2人 |
犬犬の発生数 | 176 | 93 | 23 | 6 | 0 | 0 |
狂犬病は日本、英国、オーストラリア、ニュージーランドなどの一部の国々を除いて、全世界に分布します。狂犬病はいまだに世界各地で、毎年3万~5万人の命をうばっています。つまり日本人でも海外では感染する可能性があり、発病すると死亡率は100%と怖い病気です。
犬以外の野生動物にも狂犬病は発生していますが、世界的にみると犬が人への狂犬病の感染源となるケースが圧倒的に多いのが現状です。2006年の国内での死亡者もフィリピンで旅行中に犬に噛まれ発病しています。なるべく多くの犬が予防接種を受けておくことで、万が一この恐い病気が日本に侵入した際、犬に流行が再びおきることを未然に防ぐことができます。
きちんと予防ワクチンを接種させることで、犬と人・社会を狂犬病から守りましょう。
狂犬病ワクチンQ&A
混合ワクチン
年1回の混合ワクチン接種
子犬は、離乳期ごろまでは、母犬から初乳を通じてもらった移行抗体によって病原体から守られています。
しかし、この母犬譲りの免疫が切れてくると、様々な感染症にかかりやすくなるためワクチン接種が必要となります。
接種時期は生後約8週齢に1回目、その後3~4週間隔で2回または3回接種するのが一般的です。
成犬では、年に1回の追加接種となります。
ワクチン接種は子犬の時だけと勘違いされている飼い主さんも多いのですが、危険な感染症にかかるのは子犬だけではありません。
人でも高齢になるとインフルエンザワクチン接種がすすめられるように、犬でも高齢期をすぎたらより病気の予防には気をつけてあげたいものですね。
現在、ワクチンがあるのは以下の病気です。
●犬ジステンパー
●犬伝染性肝炎
●犬アデノウイルス2型感染症
●犬パラインフルエンザウイルス感染症
●犬パルボウイルス感染症
●犬コロナウイルス感染症
●犬レプトスピラ感染症(カニコーラ/コペンハーゲニー/ヘブドマディス/オータムナリス/オーストラリス)
(1) 現在居住している市区町村に飼い犬の登録をすること
(2) 飼い犬に年1回の狂犬病予防注射を受けさせること
(3) 犬の鑑札と注射済票を飼い犬に装着すること
この3つが法律により義務付けられています。
近年の我が国の狂犬病発生状況
混合ワクチンQ&A
レプトスピラ感染症
世界のレプトスピラ感染国 *国立感染研究所引用レプトスピラ感染症は、犬だけでなく人にも伝染する危険性のある人獣共通感染症の1つです。犬、人ともに感染すると潜伏期間5~14日のあと、発熱、嘔吐などを生じたのち肝臓や腎臓が侵され、黄疸や腎不全になり死亡率は最大7~8割に及ぶこともある怖い病気です。
普段はあまり耳にすることもありませんし、実際2013年度の国内で届出られた犬の感染報告数は約20頭でした。そして、そのうちの1頭が中山近隣に住むワンちゃんでした。
年間20頭というと、巷にありふれ流行しているという病気でも無いように思えますが、レプトスピラ菌はネズミや野生動物が保菌しています。野生動物の尿が汚染源となり感染が広がりますが、レプトスピラ菌が好むところは湿った土壌(川辺や山、沢、田んぼなど)であるため、感染症例は猟犬や水遊びが好きな犬に多い傾向があります。
アスファルトのような乾いたところでは、菌は生息できず通常街中暮らしのワンちゃんに感染する機会は少ないのですが。。。
今回近隣で発症したワンちゃんは、家と近所を歩くだけが主体の生活スタイルは完全なCity派でした。
思い当たるとすると、雨上がりの公園を歩いたことくらい。中山周辺は、ネズミ、タヌキ、イタチにシカもいればイノシシも山に暮らしています。野生動物が尿をしていったぬかるんだ道を運悪く歩いて感染が成立してしまったのかもしれません。
ちなみに、レプトスピラ感染症には、インフルエンザにもA,Bのように種類があるようにカニコーラ、コペンハーゲニー、ヘブドマディス、オータムナリス、オーストラリス等多数の血清群があります。
今回の血清群は秋病Cともいわれるオーストラリスでした。ワクチンには交差性がなく、含まれない血清群に対する予防効果はありません。
幸い新しくオーストラリスを含んだワクチンができたため、当院の予防ワクチンの種類を秋病C(オーストラリス)を含む予防ワクチンに変更しました。
もちろん、ワクチンは生活スタイルに合わせて選択できるよう、これまでのレプトスピラ感染症を含まない6種混合ワクチン、レプトスピラ感染症を5血清群追加した11種混合ワクチンの両方を用意しています。
めったに無い疾患と思っていましたが、実は2014年の9月に近隣のワンちゃんで2頭目のレプトスピラ感染症がでてしまいました。血清群はヘブドマディス(国内のヒトの感染では一番多いタイプ)でした。
やはり、気を付けてもらうように声掛けしていかないといけないかなあと改めて思いました。
ちなみに、昔は田んぼ仕事を裸足でしたり傷口から菌に感染する危険性がありましたが、現在では人の感染例として、トライアスロンなど水中を泳ぐ競技や海外でビーチサンダルなど素足での歩行中の傷からの感染ケースが増えているようです。
レプトスピラ感染症Q&A
去勢・避妊手術について
オスの場合:
前立腺はテストステロンの影響を受け、生涯を通して徐々に大きくなる傾向があります。前立腺炎や加齢に伴う前立腺肥大も去勢手術によって前立腺を縮小させる効果があります。その他の利点は、会陰ヘルニア、精巣、肛門周囲腺腫の予防になります。前立腺肥大は防げますが、前立腺癌の予防にはなりません。
また去勢していない雄はマーキングをします。犬にはおしっこをかけてはいけない場所は分かりません。
また当然ながら発情期の雌に発情しますが、多くの繁殖を行なわない雄犬にとっては欲求不満の種となってしまいます。
このようなことを含め去勢された雄犬では男性ホルモンに関連する攻撃性やマーキング、マウンティングといった飼い主さんが頭を悩ますような問題行動の発生を抑制します。
人懐こさや社会化については変化はありません。
メスの場合:
避妊手術は乳腺腫瘍の発生リスクを抑制することが分かっています。最初の発情が来る前に避妊すると、乳腺腫瘍になる確立はゼロに近い(0.05%)。2回目の発情前だと発生率は約8%、2回目の発情後には約26%(4頭中1頭)が乳腺腫瘍になるという研究データがあり、避妊手術するをするのであれば早期に行なうほうがメリットが大きいといえます。
また中年の雌犬では子宮蓄膿症の発生が多く見られますが、避妊(卵巣子宮全摘出術)しているメスでは当然罹患しません。
発情中の手術は出血が多くなるので、避けた方がいいでしょう。
デメリットについて:
オス・メスともに、手術には全身麻酔のリスクや術後の疼痛や感染、術後太りやすくなる、メスでは大型犬等で稀に性ホルモン減少に関連する尿失禁の発生といったデメリットもあります。
手術の流れ
問診・検査
健康状態、病歴、ワクチン接種の有無等により、手術OKという診断を受けたなら、手術の予約を入れます。
ワクチン未接種の場合は、この時に接種させます。抗体価が得られるまで約2週間かかるので、手術を受けさせるなら、そのあたりに予約を入れましょう。
絶食について
手術前日夜10時までに食事を済ませてください。水は当日の朝9時以降は飲ませないで下さい。同居動物のフードを食べないよう気をつけて管理しましょう。
手術当日
絶食・絶水でお昼12時ごろまでにご来院下さい。出来るだけ排尿・排便を済ませて来て下さい。
身体一般検査、血液検査等を行い問題がなければ手術となります。
入院
だいたいは日帰りが可能ですが、1泊する場合もあります。1泊は手術費用に含まれています。
退院
1週間後に抜糸となります。3~5日間は抗生剤の内服薬をおだしします。
歯周病
ワンちゃんの80%が歯周病?!
犬や猫では虫歯はあまり見られませんが、歯周病はヒトと同じようによくみられる口腔疾患の1つです。
一般に、飼われている3歳以上の犬猫の約8割もが歯周病にかかっていると言われています。
犬・猫で多い歯周病が心臓病、脳血栓、腎臓病を引き起こすことがあることを知っていますか?口の中の健康は、全身の健康にもつながっているのです。たかが歯とはあなどれません。以下の項目に当てはまる場合は歯周病の可能性があります。
あなたのワンちゃんは大丈夫?
■よだれが多くなった。
■口の周りの汚れが目立つようになった。
■口臭を感じる。
■口の周りを前足で気にしていることが多い。
■口の周りを触ろうとすると嫌がる。
■軟らかいものを好み、硬いものは食べようとしない。
■食欲はありそうなのに、食べようとしない。
■片側の目に目ヤニが見られる、または目が充血している。
■クシャミ、鼻水、鼻からの出血などが断続的に見られる。
■頬や顎が腫れている。または、穴が開いている。
上顎:歯の表面の殆どが歯石に覆われた状態。
歯の根元の炎症が鼻腔にも到達していた。
下顎:歯の表面は殆ど歯石に覆われ、歯垢も貯まっている。
歯周病になる前に、お家で歯みがきをしましょう。
歯磨きを上手にしても、1日たてば歯垢が付着します。歯垢は3~5日程で歯石に変わってしまいますので、出来れば毎日、毎日が難しくても2日に1回は歯みがきする習慣を身に付けたいものです。
歯磨きは子犬の頃から習慣にしておくのが一番ですが、成犬の場合でも湿らせたガーゼを指に巻いて、歯列の外側をやさしくなでてあげることから始めてみましょう。そして慣れてきたら小さな歯ブラシで歯列まで磨いていきます。これだけで歯周病が予防できるというのですから、こんなにいいことはありませんよね。